自衛隊幹部らによる靖国神社への集団参拝が、「憲法が定める政教分離原則に反するのでは」などと議論を呼んでいます。「靖国問題」などの著書がある哲学者の高橋哲哉・東京大学名誉教授は、「今回の問題は過去を断ち切れていないことにある」と言います。どういうことなのでしょう。
たかはし・てつや 1956年生まれ。東京大学名誉教授。専門は哲学・現代思想。著書に「戦後責任論」「靖国問題」「国家と犠牲」など。
安倍政権で集団的自衛権の行使が一部容認されて安全保障法制ができ、岸田政権で敵基地攻撃能力の保有に踏み出しました。防衛費倍増の方針が打ち出され、台湾有事での「戦う覚悟」を迫る政治家の発言もありました。そんな状況の中で、まるで戦争準備の一環のように、自衛隊員が戦死したらどうするのかという議論が始まっています。
例えば、陸上自衛隊の火箱芳文・元幕僚長が昨年、「日本会議」の機関紙に「国家の慰霊追悼施設としての靖國神社の復活を願う」という文章を発表しました。「近い将来国を守るため戦死する自衛官が生起する可能性は否定できない。我が国は一命を捧げる覚悟のある自衛官たちの処遇にどう応えるつもりなのか」と問い、靖国神社を国の施設にするように訴えたのです。
■軍国主義の精神的支柱として…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル